契約当事者の年齢が18歳未満の場合は、未成年者を保護するため法定代理人(親権者、後見人)の同意がない契約は、取り消すことができます(下記解説は令和4年8月1日現在の情報に基づいています)。
(1)未成年者契約の取消しの要件
以下の要件をすべて満たす場合は、未成年者が行った契約を取り消すことができます。
・契約時の年齢が18歳未満であること
民法の改正により、令和4年4月1日から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
・法定代理人が同意していないこと
法定代理人とは、未成年者に対して親権を有する者のことをいいます。多くの場合は親ですが、親権者がいないときは未成年後見人が法定代理人となります。父母が婚姻中の場合は、父母が共同で同意していないと有効な同意にはなりませんので、父母の一方が単独で同意した場合は取り消すことができます。両親が離婚している場合は、親権を有している親の同意が必要です。
・法定代理人から処分を許された財産の範囲内でないこと
法定代理人が目的を定めないで処分を許した財産(小遣い)の範囲内は取り消すことができません。
・法定代理人から許された営業に関するものでないこと
・未成年者が詐術を用いていないこと
詐術とは、未成年者が自分を成年者と偽ったり、法定代理人の同意を得ていないのに同意を得ていると偽ったりして相手方が誤信したことをいいます。積極的に詐欺的な行為をして偽った場合であり、単に成年であると言ったり同意を得ていると言ったりしただけでは詐術にはあたりません。
・法定代理人または成年になってから追認していないこと
法定代理人や契約当事者が成年に達した場合は追認することができます。追認は取消しできる法律行為(契約)を「取り消さない」とする意思表示です。例えば代金を支払うなど債務を履行したり、履行の請求をした場合は、追認したものとみなされます。ただし、代金の支払いが自動引き落としの場合は、18歳になった月や、その翌月に一度引き落とされただけであれば、追認行為を否定できると考えられます。
・取消権が時効になっていないこと
未成年者契約取消権の時効は、未成年者が成年になったときから5年間または契約から20年間です。
(2)未成年者契約取消しの方法と効果
契約を取り消すと契約時にさかのぼって最初からその契約は無効なものとみなされます。
・未成年者自身または法定代理人のどちらからでも取り消すことができます。取消しの意思表示は後日のトラブルを避けるためにも書面で通知しましょう。コピーを取って郵便局の窓口から「簡易書留」または「特定記録郵便」で送付することが望ましく、配達証明付き「内容証明郵便」で通知するとより確実です。
・代金の支払い義務はなくなります。未成年者が支払った代金があれば返還請求できます。
・未成年者が受け取った商品やサービスは、現に利益を受けた範囲(現存利益)で返還すればよく、現に利益が残っていなければ返還する必要はありません。